剣道の理合の意味とは?柔道の理合、間合・正中線・中心取りも解説

武術・技術

日本武道を学んでいると、理合という言葉に出会うことがあると思います。聞き慣れない言葉ですが、武道における理合とはどういう意味なのでしょうか?

ここでは、剣道の理合(りあい)の意味を剣の三大理合 中心取りの理合、活人剣の理合を含めて解説し、さらに柔道での理合についても触れています。

この記事を読むと、剣道で多種ある理合、間合の種類や、正中線について誤解しやすい点、中心とは何かについて、柔道の理合との共通点についても知ることができます。

記事の作成には以下のサイトを参考にさせて頂きました。

それでは早速、剣道の理合の意味から見ていきましょう。

剣道の理合(りあい)の意味とは?

剣道での理合(りあい)の意味は、万物の原理との調和を個人が自得することです。以下ではこれについて詳しく説明をしていきます。

一般の理合と意味が異なる

理合という言葉は、一般的には「理由や道理」という意味で使われています(「理合:わけあい。理由。道理 goo辞書より)。

理にかなう、という言葉があるように、理(ことわり)とは万物に共通する「こうすればこうなる」という法則を指しています。

しかし、剣道で使われる理合という言葉は、単に理由や道理とは違った独特の意味合いを持っているようです。

剣道での理合の英訳をみると、”Kendo Laws”(剣道の法則)などとされていますが、私が調べた限りでは、合気道の理合が英訳された“Harmony of principles(原理を調和させること)“という意味の方が近いと思われます。

その理由は、剣の三大理合を調和させて中心を取り、活人剣の理合を体現することが剣道の目的であるからで、これについては後述したいとおもいます。

理法と理合の意味

理合の意味について調べていくと、剣道では「理合」とは別に「理法」という言葉が使われていて、理合と混乱してしまいそうになります。理法は理合と違うのでしょうか?

理法は、「その技術を学び練習するために必要な決まりごと」の意味であると言われています。

剣道では、刀の持ち方を「刀の理法」といい、身体を軸として手で刀を持つことを「身法」と呼ぶそうです。

つまり、理法の意味とは、技を教えるときにどの先生も共通して(口を酸っぱくして笑)言うような決まりごとや方法のことと言えます。

理合は個人的なコツ?

剣道の理合の意味について、関連サイトでは以下のように説明されています。

  • 「自分の身体のつくりや思考の仕組みに合わせて自分なりに構築していく必要がある」 (Kendo Practice)
  • 剣の理合を百錬の稽古によって学び、そこから自らが行うべき、自らの法則「剣の理法」を自得する

剣道の理法は、技の原理を体現するために、全ての人に共通して必要な方法・規則でした。

これに対して、理合はその理法を修練して自得・体得した自らの法則を意味するもので、個人としての実体験・体得を伴うコツのようなものあると解釈できるでしょう。

「理」が万物に共通の原理だとすると、「理法」は原理に一致するための人間に共通した方法、「理合」はその方法(理法)を使って自得した、個人を「原理」に「合」わせるコツとも言えるかもしれません。

剣の3大理合

剣道の理合はいくつも存在するようですが、最も大切な理合として「剣の3大理合」というものがあります。

  • 剣の3大理合
    1. 間の理合(間合い)
    2. 正中線の理合
    3. 中心取りの理合

剣道を行うときに関係してくる、物理的・時間的・精神的な位置関係を間合と言います。

それぞれ順を追って見ていきましょう。

間の理合(間合い)

武道では間合いという言葉をよく耳にしますが、「剣の3大理合」の1つである間合には3つ種類があります。

  • 間合いの種類
    1. 物理的位置関係・空間的距離
    2. 時間的なタイミング
    3. 心と心の関係

剣道の間合には、3次元空間の物理的位置関係、時間という4次元上でのタイミング、そして心という5次元とも言える心と心の関係まで含まれています。

物理的な間合い

剣道での「物理的な間合い(=距離)」には、遠間や近間、我が間・敵の間などいくつも存在しますが、相手との攻防の中で、この距離(間合い)ではこうなるという予測・判断のために間合いという理合が使われます。

この距離は一本を打てる間(距離)、打たれる間(距離)、打てるけど打ってはいけない間(距離)・・・など、それぞれ規定された間合いが存在して教えられますが、その間の違いを体得して一本を打つために使えるようになるのが間の理合を学ぶことです。

時間的な間合い

剣道での時間的な間合は、好機やタイミングという言葉に尽きるでしょう。このタイミングでは一本を打てる。または打たれる、というような時間的な流れの中でのタイミングが間合の一つです。

時間には速さが関係しますが、技の速度やタイミングをコントロールしているのは呼吸です。時間的な間合は呼吸のコントロールを使って取るといっても良いと思います。

心の間

剣道での心と心の関係である「心の間」という間合では、「相手からは打ちにくく、こちらからは打ちやすい」という心理的位置関係を作り出すことが目指されます。

その方法として、相手の心を読んで相手の出方を判断・予測することで無駄撃ちを避けたり、気力や気迫をつくりだすために丹田に力を入れて上虚下実の体勢を作ったり、「必ず決める」「気を抜かない」などの攻め際・引き際などの精神や心構えをつくることなどがあるようです。

心にも呼吸は大きく関係しています。相手の呼吸が乱れ、こちらの呼吸が安定するような状況を作り出すことも、心の間を制するポイントではないかと思います。

正中線の理合

剣道の試合では1本をとるためにお互いの身体の正中線の奪い合いをします。

正中線とは、人を頭頂から左右対称になるようにまっすぐ切り下ろした平面を通る線のことです。正面から見ると、頭頂部、鼻、胸骨、へそ、恥骨の中央を通る垂直線になります。

Human anatomy planes, labeled.svg
解剖学的には正中線は赤い平面を通る中心線になります。(画像引用元:Wikipedia)

この正中線の攻防に勝つために必要な修練として、「正中線の理合」というものが学ばれます。

正中線の理合の稽古

剣道での正中線の攻防というと、相手の正中線をいかに斬るかということのようにおもってしまいますが、そうではありません。(意外ですよね!)

①相手を自分の正中線上に置くという位置取りをした上で、②自分の正中線に沿って技を出すことで最も確実に相手を斬るというのが、正中線の理合です。

そのため、正中線の攻防に勝つための理合の稽古では、位置取りのための稽古と技を正中線に沿って出せるようになるためのの稽古の2種類があるようです。

  • ①位置取りのための稽古

正中線の攻防では、相手を自分の正中線上に置き、相手の正中線上に自分の身体を置かないことを争います。そのためには、足さばきや腰の備え、敏捷さなどの稽古が必要です。

  • ②自分の正中線に沿った打ち込み

自分の正中線上にあるものをを斬ることができるようになるためには、正中線に沿った素振りや打ち込みで合理的な太刀筋を稽古する必要があります。

中心取りの理合

剣道での中心とは、間の理合と正中線の理合が一致した、時間・空間・精神上の一点のことを言うようです。

「勝つためには必ず制さなければならない、負けないために決して奪われてはならないポイント」とも言われています。

剣の3大理合の3つ目である中心取りの理合は、すべての間合と正中線の理合が一致する状況をつくって捉えることだと思われます。

冒頭で触れた、“Harmony of principles(原理を調和させること)“を一点集中させる、理合の要(かなめ)とも言えるでしょう。

以下では、時間・空間軸上の中心の構成要素についてお伝えします。

調和させるべき中心点

剣道の理合における中心には、距離(間)や位置取り(正中線争い)でとらえる空間上の中心と、タイミングを中心とした時間軸上の中心があります。

空間上の中心点

剣道で勝つために取るべき、負けないために守るべき空間上のポイントとは、

  1. 技の到達できる距離的な間合い
  2. 心理的に優位な間合い
  3. 正中線争いで優位な位置関係

の3つをすべて制している状態(理合)のことと言えます。

時間軸上の中心点

剣道の時間軸上での中心を取る方法としては、打突攻撃のタイミングを、技・心・身体の3つの中心を取る方法があります。

  • 「3つの先」
    1. 相手の技が決まる直前(剣・技の中心)
    2. 打とうと意識する直前(気・心の中心)
    3. 出鼻・技を出そうと動き出す直前(体・動作の中心)

先程の3つの優位をとらえた空間的中心点を、この3つの先のいずれかのタイミングに調和させることができれば、剣の3大理合を得たと言っていいのではないかと思います。

活人剣の理合

剣道の最終目的に「活人剣の理合」というものがあり、空間・時間の中心を確実にとり、それを知らせることだけで相手を降参させ斬らずに相手に勝つことを目指しています。

種々の間合や正中線の理合、そしてそれらを一致させる中心取りをすることを修練し、活人剣を個々が体現することが剣道の理合と言えるでしょう。

柔道の理合の意味

同じ理合でも、柔道の場合はどのような意味で使われているのでしょうか。

柔道の理合

柔道と理合は剣道と同じく、相手との関係性をコントロールすることを、体験や稽古を通して個人が掴んでいくものであると認識されています。

柔道の「理合とは、相手との調和・距離感を操ること。技は調和を崩すことで生まれ、崩すためにはまず、調和を知らなければならない。理合は、教わるのではなく、組み合う2人が互いに体感し、考えながら覚えるものだ

柔道の教育学的考察 ─ 軟式柔道とは

日本武道に共通する理合は、体を通して原理を感じとるところにあるのかもしれません。

柔道の理合はメカニズム

柔道の理合は、メカニズムという意味合いに使われているようです。

理合で技を分類

柔道では、「なぜ相手を投げることができるのか」というメカニズムを理合と呼んでいて、技を理合から分類しています。

技ごとに分類される理合には、

  • 重心を使う技の理合
  • 足を狙う技の理合
  • 支点を使って投げる技の理合
  • バランスを崩して投げる技の理合

などがあります。

例えば、背負技にも、背負いあげて投げる背負投と、引き落として投げる背負落があり、技を働かせるメカニズム(理合)の違いを見極めることが求められています。

また、柔道では、技の理合を表すための型(投げの形・固の形)などがあるそうです。

剣道の理合・柔道の理合

それでは、理合についてのまとめです。

  • 剣道の理合の意味は、万物の原理との調和を個人が自得すること
    • 理合に必要な人類共通の決まりごとは理法と呼ばれる
    • 剣道には間合・正中線・中心の3大理合がある
    • 中心を一致・調和させる中心取りの理合によって活人剣の理合となる
  • 柔道では技のメカニズムが理合と呼ばれている
    • 柔道でも理合は原理の自得を指す

柔道に理法という言葉があるのかどうかはわかりませんが、理合や理法という言葉とその意味を見てきて、カンフーで言われるところの法と功の違いに通ずるところがあると感じました。

カンフーで言われる法(Fa)は技などを修するために、守るべき方法や規則つまり理法です。そして功(Kung/Gong)は、理法を使って修練し、万物の理に自らを合わせることに成功する理合であり、功夫(カンフー)は理合を工夫すること。

流派は違えど、武道武術は互いに共通の認識をもっているのだなあと思いました。

原理、理法、理合の意味や違いを知った上で、理法を学び、理合を体得し、万物の原理を体現する意識を持って稽古・精進していきましょう。

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