最も世界を震撼させたボクサーと言われる井上尚弥。その強さについてたくさん報道されていますが、ボクシング用語なども沢山混じって、強さの度合いが理解しにくいところがあると思います。
そこで、ボクシングになじみのない方でも理解できるように、井上尚弥の強さの世界線の戦績・実績、評価、有名な歴代王者との比較、ランキングについても触れながら、プロボクサー井上尚弥の強さについて5つの側面から解説してみたいと思います!
ここでは、井上尚弥の記録破りの強さを、実績、防御力、攻撃力、精神力、評価の側面から解説します。
それでは早速、実績から見ていきましょう!
井上尚弥の強さ①「記録破りの快進撃」を解説
井上尚弥の強さは実績としてその評価が数字にあらわれています。以下はその代表的なもの。特に歴代の王者と比べても目立つその快挙は、世界を驚かせる事になりました。
- 第6戦:世界王座獲得の日本人男子最短記録
- 第8戦:世界最速・飛び級での2段階制覇
- 第8戦:WBO世界王者の初KOを奪う
- 第16/17/18戦:4ラウンド計5分足らずで3人の世界王者をKO
それぞれについて、詳しく解説してみましょう!
「世界王座獲得の日本人男子最短記録」とは
井上尚弥はプロになって6戦目の2014年の試合で世界王座を獲得しました。これはその時点で日本人男子としては最短の記録でした。一進一退して苦労して勝ち取った王座ではなく、電光石火のごとく、巨木をなぎ倒す勢いを持った強さで進んだという感じがします。
ところで、世界王座獲得6戦目って、どのくらい速いのか?解説してみましょう。
歴代王者の日本人の例では ガッツ石松(そう、あのゴリラみたいな方です!)が18戦目。重い階級ほど競争が激しいことを考えると、軽量級の井上尚弥が早く勝ち進むことができるのは当たり前だと思うかもしれません。
井上尚弥と重量階級の近い具志堅用高(はい、あのアフロのおじさんです!)を見てみると、第9戦目です。井上は具志堅用高よりも3戦も早く世界のトップに上り詰めています。
(就活でも、面接9回目での内定と6回目での内定では大きな差がありますよね…面接9回はキツイなぁ。)
ちなみに、井上尚弥の前後はこのおふたり。
- 2011年井岡一翔が7戦目で獲得
- 2015年田中恒成が5戦目で記録更新
2011年の井岡一翔から4年間誰も破れなかった記録を更新した井上。15年に田中恒成が5戦目と記録更新していますが、マイク・タイソンが28戦目で世界王座を獲得したと思うと、井上尚弥を含めた日本の若手ボクサーは世界のトップまで一気に駆け上がっている感があります。
「8戦目、飛び級での2段階制覇が世界最速」とは
井上尚弥は、プロ第8戦目で「世界最速飛び級での2段階制覇」を果たしています。
見慣れない用語がたくさん・・・どういうことなのか1つづつ解説します。
「2段階制覇」
ボクシング選手は重量ごとの階級に分かれて、同じ階級の相手と戦います。
プロボクシングの階級は全部で18階級。ヘビー級とか、ライト級とか言われるやつですね。それぞれの階級に王座が設けられています。
2段階制覇というのは、2つの階級両方で王座を獲得することです。
「飛び級」
井上尚弥は、全18階級中の軽い方(下)から数えて3段階目で王座を獲得し、それから次に5段階目に飛び級して2つの王座を制覇・獲得しました。
3段階目が49㌔以下のライト・フライ級で、5段階目が52㌔以下のスーパーフライ級です。

フライというのは蝿(ハエ・FLY)という意味で、ハエくらい軽いということなのでしょう。ライト・フライ級は小バエ、スーパー・フライ級は銀蝿と言ったところでしょうか…
確かに井上尚弥は見た目もサラッとした好青年で超軽量ですが、さすがにハエは言い過ぎでは…?てっきり揚げ物くらいカラっとして軽い方のフライ(FRY)だと思ってましたが(笑)。
この2階級の間にある50.8㌔以下のフライ級を飛び越して、井上尚弥は2段階王座を獲得しました。飛び級とはまさに天才の代名詞。その重量幅は約3㌔。
重量超過で試合に出られなくなった対戦相手に心底失望していたことがありましたが、井上は体重のコントロール力も完璧なのでしょう。相手に勝つためには、自分を制御できることが必要。井上には自分に勝てる強さがしっかりとあるということなんですね。
「世界最速8戦目での2段階制覇」の解説
他の歴代王者の選手と比べてみると、複数段階の制覇では、フィリピンのマニー・パッキャオが、何と世界最多で6段階もの制覇を果たしています。しかし、そんなパッキャオでも1段階制覇が25戦目で、2段階制覇は3戦の間隔を置いた29戦目。
これに対して井上尚弥は、1段階制覇をした6戦目からたった1戦を挟んだ8戦目で2段階を制覇してその強さを見せつけています。
重量幅3㌔の2つの世界王座を光速制覇!してのけたんですね。
「日本最速の3段階制覇」
そして3段階制覇は、日本最速記録の第16戦。階級はスーパーフライ級(52㌔)より1つ上のバンタム級(53㌔)。
バンタムとは、チャボなどの小型のニワトリのことだそうです。たった1㌔だけで銀蝿から大分飛躍しましたね(笑)。ニワトリ同士を闘わせる闘鶏なんていうものもありますが、そこからヒントを得たんでしょうか。
歴代王者の日本人で他に3段階制覇を達成しているのは、亀田興毅、八重樫東、田中恒成、八重樫東など。
小バエからニワトリへの光速での3段階進化の日本記録。重量幅は約4㌔。飛ぶ鳥を落とす勢いの強さとはまさにこのことです。
「第8戦:WBO世界王者の初KOを奪う 」
さらに、この第8戦のWBO世界スーパーフライ級タイトルでは、対戦相手で歴代世界王者の一人でもあったオマール・ナルバエスを初KOしたことも井上の強さを見せつけるポイントとなりました。
- 第8戦:WBO世界王者オマール・ナルバエスの初KOを奪う
オマールは、アトランタオリンピックとシドニーオリンピックに出場し、2階級の王座を通算27回もの防衛を果たしていた類まれな戦績を持ったアルゼンチン出身の39歳(当時)。世界王座の連続防衛回数上位者の20回程度を大幅に上回る強者です。
約20年のプロ・ボクシングのキャリア中で初のKOをオマールから奪い取った井上尚弥。
どんなに評価の高い相手でも、ブレずに自分の強さを発揮していく姿は、常識破りへの驚きととともに、希望の光を見る人に与えたに違いありません!
「4ラウンド計5分足らずで3人の世界王者をKO」
井上尚弥が「世界を震撼させた」理由の1つに、「4ラウンド計5分足らずで3人の世界王者をKO」 してしまうほどの強さを持っていることがあります。
ボクシングの世界的メジャー団体は4つあって、井上はそのうちの全ての団体で王座を獲得しています。(WBC,WBO,WBA,IBF)
そしてその中の3つの世界王者を全て2ラウンド以内・1分台でKO勝利した井上尚弥。井上にKOを奪われた歴代世界王者はこの3人。
- 18年5月ジェイミー・マクドネル(第16戦)
- 18年10 フアン・カルロス・パヤノ (第17戦 70秒)
- 19年5月エマヌエル・ロドリゲス(第18戦)
王座って、すごーく苦労して、死闘して汗と涙の末に勝ち取るものじゃないの!?と思ってしまった方もいるでしょう。
実際に一部では「試合が早すぎてつまらない」とまで批判が上がるほどの快挙でした。
ボクシングは基本1ラウンド3分ですが、2ラウンドに満たない5分間に世界チャンピオンを3人もノックアウトしてしまうなんて、まさに「モンスター(怪物)=井上の別名」と言われるのにふさわしい強さですね。
ここから井上尚弥の記録破りの快進撃である「世界王座獲得の日本最短記録」「8戦目、飛び級での2段階制覇が世界最速」「3段階制覇日本最速」「5分で世界王者3人KO」が、歴代最強とまで評価された理由であることがわかると思います。
井上尚弥の強さ②「完璧な防御力」の解説
井上尚弥の強さは記録だけではありません。次にリングの上での井上尚弥の実際の強さについて解説していきましょう。
「これまで1度もダウンさせられたことがない」とは
さっき触れたオマール・ナエバスと同様、井上尚弥はプロキャリアの中でこれまで1度もKOどころか、ダウンすらしたことがありません。
それってどういうことなの?と分かりづらいかもしれないので、KOとダウンの違いを確認しておきましょう。
KOとダウンの違いを解説
KO(ケーオーと読みます)とは、ノックアウト(Knockout)の略で、ボクシングではパンチを受けた相手が倒れて、さらにレフリーが10秒カウントする間に立ち上がれないほどのダメージを与えることです。
テレビでよく見る、「…3,2,1,カンカンカーン!」というあのシーンですね。
それに対して、ダウンとは、ノックダウン(Knockdown)の略で、単に攻撃によって相手が倒れることを意味します。10秒以内に立ち上がればダウン、立ち上がらなければKOになるということです。
KOの場合は、即試合終了で勝敗がつきますが、ダウンの場合は、ルールによって3回以上で試合終了になるか、ポイントとしてカウントされます。
ダウンしただけでは勝敗がつかないので、無敗の(1度も負けたことのない)選手であっても試合中にダウンをさせられている可能性はあるのですが、プロで無敗の井上尚弥の場合は、それも皆無。相手に手を出させない防御力の強さがこの実績からうかがえます。
ちなみに井上はアマチュア時代の81試合で6敗していますが、それもダウン回数0です。
81試合という数ももの凄いですが…その中で一度も倒れないという防御力もピカイチです。
「18戦目まで流血皆無」の秘訣を解説
さらに、プロ18戦目までリング上で(おそらくリング外であっても)一度も血を見せたことがないという事実も井上尚弥の防御力の強さを表しています。
井上尚弥の守りの強さの秘訣は、強力な下半身にあると言われて評価されています。
ボクシングでは主に頭部を主体に使って相手のパンチをよけていきますが、井上尚弥は珍しく下半身主体で守りを行うボクサーなのだそう。
体幹や下半身が強力で、上半身ではなく、足を使ったポジションの敏捷な移動で相手の攻撃を避けていきます。
その連続的な足使いのせいか、2足のトレーニングシューズをわずか1ヶ月半で履きつぶしてしまうそう。
私が井上の試合を見ていて感じるのは、足が速いというよりかは、相手の動きを認識してから反応してよけるまでの間が超瞬速である、ということです。
目から情報を得ること、判断すること、そして動くことそれぞれにかかる時間がゼロに近い。 相手を認識して判断して動いているのではなく、目から足の先までが一体になっているように見えました。
熱いものを触った瞬間、熱さを感じる前に手が引っ込む、反射反応なみの速度を意識のコントロール下で使いこなしているように思えます。
井上尚弥の強さ③「攻撃力」を解説
井上尚弥の強さはもちろん、その攻撃力にも象徴されます。ここでは、井上の攻撃力に花を咲かせるKO力、速さと運動能力、正確さとタイミングについて解説します。
「軽量級なのにKOが率が高い」とは?
井上尚弥の強さを顕著に表す指標でもあるKO(ノックアウト)率。井上は「軽量級なのにKOが率が高い」と評価されることが多いです。
単にKO率が高いというのではなく、軽量級なのに、と言われるのはどうしてなのでしょうか?
ウィキペディアに掲載の歴代有名選手の戦績をもとにKO率を計算して表にまとめてみました。上から重量の重い順で、知名度の高い選手をピックアップして載せています(ざっくり)。
階級 | 名前 | 試合数 | KO勝ち数 | KO率 |
ヘビー | マイク・タイソン | 58 | 44 | 76% |
モハメド・アリ | 61 | 37 | 60% | |
ミドル | 田村涼太 | 18 | 13 | 72% |
スーパー フェザー | メイウェザー | 50 | 27 | 54% |
スーパー ウェルター | パッキャオ | 71 | 39 | 55% |
バンタム | 井上尚弥 | 19 | 16 | 84% |
ライトフライ | 具志堅用高 | 24 | 15 | 64% |
フライ | 井岡一翔 | 25 | 13 | 52% |
井上尚弥の属するバンタム級くらいまでが軽量と言われていますが、たしかに、軽量級は50%前後と、上の階級に比べてKO率が低い傾向があるようです。
「力(強さ)=重さx速さ」という物理法則を考えると、体重が重いほど威力のあるパンチを繰り出しやすいという点で、軽量級はハンデを負っていると言えるでしょう。パンチを早くするトレーニングはできても重くすることはできないからです。
速さと重さを両方使える、重量のある階級は、有効なKOを出せる確率は必然的に高くなると考えられます。
それにも関わらず、84%という井上尚弥のKO率は群を抜いて高く、上の階級の歴代王者すら上回っています。
ここが「軽量級なのに」KO率が高いと評価されるゆえんでしょう。
試合数がまだ少ないということも要因としてありますが、軽量級であるにせよ、なきにせよ、KO率が圧倒的に高いと言えます。
井上尚弥の「攻撃の強さの秘訣」
井上尚弥の強さの秘訣は、先程ふれた下半身主体の超瞬速的な守備能力に加えて、その攻撃の速さと高い運動能力、正確さとタイミングにもあります。
試合での攻撃、それに対する歴代のボクサーたちの反応や感想、強さを生み出している要因(秘訣)について見てみましょう。
「パンチの速さ」
井上尚弥のパンチの速さは、KOを実際に受けた元世界王者の小國以載、アジア王者の杉田ダイスケがその時の様子を、
- 「パンチが見えない」(小國以載)
- 「気づいたら床が目の前にあった」 (杉田ダイスケ)
と表現しているほど。
井上が速いパンチを生み出せる秘訣は、腰の回転にあるとも言われています。
ボクシングのトレーニングでは、体幹と下半身を鍛え、腰の回転を練習します。こうすると、パンチを速く連打できるようになります。
確かに、井上尚弥の試合中の連打の速さは、あまりに速いので、私が見ているとマンガに描かれるように腕が数本あるように思えるほどです。(ポパイみたいにね!)
トレーニングシューズがボロボロになってしまうのは、腰の回転を支えるために足でしっかり床をコントロールしていることも手伝っているのに違いありません。
「運動能力」
井上尚弥の強さを生み出す司令塔として、非常に高い運動能力があります。 その井上の運動能力について、多種の競技を極めるマルチアスリートの武井壮が、
- 「運動を処理する速さがすさまじい」(武井壮)
と評価・絶賛しています。
さらに、井上尚弥は 左ジャブで3段階制覇をしていて、かつ右手も同様に使える両刀使いのボクサー。普通の人には当たり前に存在する「利き手」というアンバランスさを持たない、左右の分離が統合された完全かつ理想的な強さを持つ、歴代王者の中でも稀なファイターなのです。
左利きの人とスパーリングをするとわかるのですが、相手の見え方から何から全てが逆で、頭は混乱するし、体はついていかないしで、非常に厄介です。
左利きだけなら、まだ逆に相手の弱みを右側に見いだせるので慣れれば対処の仕方があるのですが、両刀使いとなると、ほぼ無敵なのではないでしょうか。
井上尚弥の強さはこの、偏りなく全身に張り巡らされた高性能な運動神経回路から引き出されているといえるでしょう。
「正確さ・タイミング」
井上尚弥の攻撃の強さのポイントは、狙いを当てる正確さとタイミングの良さです。その正確さは機械的とも言えるほど。ロンドンオリンピックボクシング日本代表の須佐勝明、ボクシング世界王者の山中慎介の2人のは、井上の攻撃について以下のように評価しています。
- 「距離があってもピンポイントに標的に当てる」(須佐勝明)
- 「距離感の把握が早く、瞬時に距離や当てるポイントを掴む能力がずば抜けている」(山中慎介)
井上は相手からは遠く感じるところから絶妙なタイミングでパンチを出して意表をつき、かつ確実正確にヒットさせるのが得意なのだとか。
こういった正確さを、「パンチをヒットさせる当て感がいい」と言うのですが、これはパンチを受けた人が一番よくわかるところでしょう。
距離が離れているところからピンポイントで当てるというと、1990年の湾岸戦争のときに話題になった米軍のピンポイント爆撃を思い出します。それまで周囲を巻き込んで行うアバウトな攻撃の仕方から、目標だけを確実に無力化できるという精密な方法になったことにみんなが驚いていました。
井上尚弥のように、遠くから重要な点にだけピンポイントで当てることができるのは、非常に効率がよく、無駄がない、機械的とも言える能力です。
距離とタイミングの把握と目標の判断、そして定めた目標に確実に当てる攻撃能力。
これは防御と同様に、目から手や足先までの全身の一体感、反射、強力な体幹と腰の回転、によって生み出されているのだと思います。
井上尚弥の強さ④「不変の精神力」を解説
いよいよ井上尚弥の強さについての解説のクライマックス。歴代のボクサーを凌ぐ、奇跡の3冠王者井上を支える不変の精神力について見てみましょう!
「アマチュア時代の精神力」
高校生のアマチュア時代に、いくつも年上の大学生を相手に試合をして注目されていた井上尚弥。実際に高校生のの井上と闘った当時大学生の林田太郎は、井上を倒した数少ない伝説のボクサー。
その林田でさえも、井上尚弥の強さには恐怖を覚えたと言っています。
その理由は、技術が高くてもてはやされるアマチュアは精神力が弱いのが普通なのに、井上は技術と精神力と両方の強さを兼ね備えていることが驚異だったからだそう。
技術と精神も合わせて鍛えられているだけでなく、それが高校生の時からというのだから、驚きです。
ハンデやピンチをも超越した武勇伝
井上尚弥は多くはないプロ戦歴の中で、ハンデやピンチを乗り越える精神力の強さをたくさん観客に見せてきました。技術だけなく、その精神力こそが、世界に絶賛されて歴代日本人史上最高の評価と格付けに導いたように思えます。
以下で具体的な事例と武勇伝を見てみましょう。
「片手になっても無傷で勝利する強さ」
第11戦の WBOのタイトルマッチ では、試合中の怪我から片手しか使えなくなったにも関わらず、 10ラウンドという長い期間、片手で闘ってさらに無傷で勝利しました。
左右両刀使いの井上にとっては、片手が使えないことが致命的ではなかったのかもしれませんが、怪我を負ったまま10ラウンドを闘い抜いて勝利できる精神力の強さには感服です。
「いつ戦っても変わらない強さ」
井上と同じく3段階制覇を達成している八重樫東は、井上尚弥と闘った感想の中で、 「24時間ずっと強い」と評価しています。夜中の何時に闘った結果こう言っているのかはわかりませんが、プロでも時間帯によって戦闘能力にブレが起きるということを示唆している発言です。
そういった人間的な不完全ささえも覆すのは、井上の精神力の強さによるものと言って良いでしょう。24時間フル稼働できるなんて、本当に超人的ですね…。 いつでも強い、というのは、例え家族やプライベートでゴタゴタがあったとしても、リング上では決してブレないということなのでしょう。スゴイ。
「日本人BOX史上最大の圧力とピンチに耐えた試合」
YouTubeのおかげで、その強さを示す動画が拡散され、早くから世界に知られるようになった井上尚弥。さらに、世界戦に出てからの立て続けの快挙のために、「歴代王者の中で最も世界的に注目されている」とも言われています。
そして、「日本人が立った一番の大舞台」と言われる対ドネアの第19戦に望んだ時の世界的な注目、期待などから寄せられる精神的プレッシャーは、日本人のボクシング史上最大のものと言って良いでしょう。
そんな圧力に耐えただけでなく、この試合で井上尚弥は大きな試練を乗り越えて世界を感動させました。
高い精神力でピンチを乗り切る
アマチュア時代のエリートボクサーと同じように、KOで快挙を続けた歴代の選手は、 技術が卓越していても精神の強さが伴わず、初めて一筋縄でいかない相手に出会ってピンチに面したときに、一気に使い物にならなくなってしまうケースが多かったそうです。
無敗と連続のKO勝利で駒を進めてきた井上尚弥がドネアとの試合に苦戦しはじめたとき、世界は、こいつも例にもれずに心身もろとも崩れて終わるんだろうかと考えたでしょう。
しかし、12ラウンドという長期の死闘を耐え切って、ついに判定でベルトを勝ち取った井上は、このピンチを乗り越えた精神の強さから、本物の世界王者として評価されたのだと思います。
顔面骨折しながらも勝利
さらに、このドネアとの戦いで、井上は顔面の目の上の骨を陥没骨折をしていました。
ドネアが二人に見えてしまうほど視界がぼやけた状態であったにも関わらず、グローブで防御するようにカバーして相手に目の状態を悟られないまま戦っていたとのこと。
そんなことまでできてしまうなんて、井上尚弥の精神の強さはまさに歴代最強。技術・精神共に強く、モンスターと呼ばれるにふさわしい超人ぶりです。
「強さを表すPFPランキング」の解説
第19戦でのドネアとの死闘の後、井上尚弥はその記録破りの快挙、超人的な防御力・攻撃力・精神力という全方面的な強さから、アメリカのボクシングメディアで歴代日本人王者の中でも最高のランキングに格付けされました。
PFP(パウンド・フォー・パウンド)というのは、重量の階級に関わらず、現役のプロボクサーの世界最強を決めるランキングです。井上が格付けされたのは2つのPFP。
ボクシングシーン.comという、アメリカのボクシング専門のウェブメディアのPFPランキングで1位、同じくアメリカのボクシング月間専門雑誌のPFPランキングで3位にランクインしました。
- ボクシングシーンPFP(米ボクシング専門ウェブメディア)1位11月「ボクシング界で最も完璧な攻撃力」
- リングマガジンPFP3位(米ボクシング月間専門雑誌)(日本人初トップ3入り19年11月)
- 4位に格付けされた時点で
ボクシングシーンはウェブ専門メディアで、上のリンクから実際のPFPを見ることできます。グーグルクロームをお使いの方は、自動翻訳すると日本語で閲覧可能です。1位にランキングした井上を 「ボクシング界で最も完璧な攻撃力」と評価しています。
リングマガジンはアメリカのボクシング雑誌。こちらの方が権威が高いからか、井上の評価は第3位。それでも日本人として初めての上位3位のランキング入りでした。それ以前に第4位に格付けされた時点でもすでに日本ボクシング史上で最も高い評価。
歴代最強という評価は、日本人としては確実であり、世界最強としてその強さが認められるのも時間の問題という勢いです。
歴代最強と言われる理由(まとめ)
井上尚弥が歴代最強として世界的高評価・ランキングを得ている理由と、その強さについての解説をまとめました。
- 記録破りの快挙
- 世界王座取得(日本最速)2・3段階制覇(世界・日本最速)
- 世界王者3人をたった5分でKO
- 完璧な防御力
- ダウンなし、プロ無敗、 18戦目まで流血皆無
- 体幹と下半身を使った完璧な防御力
- 怪物並の攻撃力
- 軽量級で異例のKO率8割
- ずば抜けて速く正確な距離把握能力とピンポイントの攻撃力
- 左右両刀使いと左でのKO力
- 不変の精神力
- ピンチやハンデも切り抜けるプロ・アマ時代・24時間不変の精神力
- 重量無差別の世界最強ランキングPFPで歴代日本人初の高評価の強さ
20代半ばにして、これほどの快挙を挙げられるボクサーが日本に生まれたというのは、本当に驚きです。
キックボクシングの那須川天心なども常識を超えた強さを見せ上の世代を驚かせていますが、これまでの常識や限界という観念は変わりつつあるように思えます。
過去日本人はこうだったから、ここまでしか行けないとか、年齢がこれだからここまで、という枠はどんどん外れていくし、外していいんだよ、ということを井上尚弥という超新星が私たちに教えてくれているようです。
彼を見ていると、私たちが生きている世界にはこんなにも可能性にあふれているんだ!と感じてワクワクしてきます。
これから私たち一人ひとりも、日本という枠を飛び越して、自分の力を発揮していきたいですね!
コメント
「希望の光を見る人に与えたに違いありません」ってどう言う意味ですか?
直人さん、コメントありがとうございます。見ている人に希望を与えたはずです、という意味で書いたのですが、読み手に分かりづらい言葉の順序でしたね。