海外で武道を習う、はじめの一歩は英語の聞き取り。先生が英語で言っていることを聞いて、どんな練習をするのか分かればクラスに参加するのが楽しくなりますよね。
武道を習う時に出会う基本的な英語のひとつに、「技」を説明する言葉があります。武道の稽古では、「身体」のどの部位を使って、どのような「動き」をするのかという「技」を習って再現できるようにします。
この身体の部位と動きをあらわす言葉を前もって知っておけば、道場で先生の話す英語が聞こえてきやすくなりますよ!この記事では、よく使われる技に関する言葉と、英語を聞き取るための予習のポイントについてご紹介したいと思います。
それでは、技を説明する言葉の紹介に入る前に、まず始めになぜ英語が聞き取れないのか?に関する理由から見てみましょう。
どうして英語は聞き取れないのか?
英語で教育を受けて育った人でない限り、英語の聞き取りは誰にとっても多少のむずかしさがあるとのではないでしょうか。
私は海外に10年近く住んでいて、長いあいだ英語の勉強もしてきましたが、いまだに、道場で人がたくさんいるときなどは、しっかり耳をすましていても、先生の説明がうまく聞き取れないことがあります。
たまに外で耳にする日本語は音が聞こえると、聞くつもりがなくてもダイレクトに意味が頭に入ってくるのですが、母国語でない英語は、長く親しんでいたとしても、聞き取って意味を理解するという意識をもっていないと右耳から左耳へと通りすぎてしまうのです…。
英語が聞き取れないのは、ただ言葉とその意味を知らないこと、意味と音が頭の中でつながっていないこと、意味と音を実際の場面で経験していないことが原因だと、私は思います。
母国語がダイレクトに入ってくるのは、意味と音を実際の場面でたくさん体験をしたから。英語でそういった経験が少ない私達が聞き取りができないのは当たり前のことなんです。
意味と音を実際の場面で体験するのは道場ですることなので、その前の準備として言葉の意味と音を合せてを知っておくことができます。意味と音については、特に、単純な言葉ほど、カタカナとして輸入された日本語英語の音に慣れてしまっているので、本来の英語の音と意味を結びつけることができればラクに聞き取りができるようになりますよ。
それでは、武道の技をあらわす英語の言葉を見ていきましょう。
「技」をあらわす言葉
武道の先生が技を教えるときには、身体のどの部位を、どのように動かすのかということを説明してくれます。技に使う身体の部位の名前と、動かし方をあらわす英語の言葉の意味と音をチェックしていきましょう。
「身体の部位」をあらわす英語の言葉
道具を使わないで素手で行う武道には、ボクシングのように相手と距離をとってやり合う「立ち技」と、相手を倒して床の上で寝転びながら戦う「寝技」があります。寝技は英語で グラップリングまたは グラウンド・ファイティングとも呼ばれます。
「立ち技」「寝技」それぞれに使う基本的な身体の部位の英語の言葉を見てみましょう。実際の発音に近い音をカタカナで一緒に記載しました。学校で習ったのとは違うぞ~?と思うかもしれませんが、本当にこんな風に聞こえるんですよ!
立ち技に使う身体の部位
武道の立ち技では、相手との距離を取りながら、 パンチやキックなどで腕や脚などの骨の硬くて強い部位を使って攻撃します。
- 立ち技の武器
- 殴り技
- Elbow (肘)
- forearm (前腕)
- knuckle (手の関節)
- 蹴り技
- Knee (膝)
- shin (すね)
- heel (かかと)
- balls of foot
(足の指の付け根)
- 殴り技
前腕(forearm)と、すね(shin)は固くて長さがあるので、相手の攻撃を防御するのにも使います。
拳(fist)を使ってパンチするときに使う、人差し指と中指の第三関節を、英語でthe first two knucklesと言います。拳を握って、内側から数えた一つ目と二つ目の関節、という意味です。拳をしっかり握れていないと、薬指と小指などの別の部分が当たってしまうので、私がボクシング・グローブをつけてパンチの練習をし始めた頃には、よく先生に”Use your first two knuckles!”と注意されていました。
このknuckleが指すのは、人間の拳のことだけではありません。カンフーを練習するととてもお腹が空くので、練習の後に、みんなで中華料理を食べにいくことがよくあります。ある時、誰かが料理屋さんで”Pork Knuckle”を注文しました。Knuckleという言葉をパンチの練習でしか使ったことがなかった私は、出てきた豚足を食べてみたら、ちゃんと指の関節があったので 「ホントだ!確かに、これもknucklesだよね」と、とても面白く思ったのを覚えています。
他にも、牛のすじ肉をBeef Tendon (牛の靭帯) と言って、柔らかく煮たものが出されることもあります。本格的な中華料理は動物の色んな部分を使っていて、肉も骨ごと豪快に切って元の形がわかるような見た目で出てくるので、身体の部位の勉強にぴったりです!
ストレートキックの違いを決めるHeelとBalls of foot
私はHeel(かかと)という英語は知っていたのですが、Balls of footという言葉は道場で初めて聞きました。
蹴り技の基本を習った時のこと。初心者の私たちは正面にまっすぐ蹴るストレートキックには、かかと蹴り(Heel kick)と、つま先蹴り(Toe Kick)の二種類があることを知ります。ですが、実際に練習してみると、かかと蹴りはみんなできるのですが、つま先蹴りをするときにかかと蹴りとの違いがあいまいで、うまくできません。
そこで、Toe kickのHeel kickとの違いを説明するために、先生は”Use your balls of foot!”と言って自分の足の裏の指の付け根のふっくらした部分を指しました。この部分は骨と骨のつなぎ目で関節が球状になっているので、Ballsと言うんですね。(Toe Kickと呼ばれるので、本当に爪の先で蹴ると思っていた人もいましたが(笑)。)
こうして私たちは蹴るときにHeelとBalls of footがどの部分なのかをはっきりと知ることで2種類のストレートキックができるようになりました。
また、かかととつま先は武道の足さばきの2大要素でもあります。かかとを床につけるかつけないかで全く違った力の起こし方になってくるので、この2つの言葉、HeelとBalls of footを知っておくことは技を習う上でとても大切です。
発音はballsのSとofのOがつながって、「ボールゾブフッ(ト)」と聞こえます。
発音のトリック、子音忍者
Heelやknuckleの音 は、「ヒール」「ナックル」 ではなく、Lが消えて「ヒーゥ」「ナックゥー」と聞こえます。
このLの音は上顎に舌を付けたまま発音されるのですが、日本語のラリルレロは舌を一度上顎につけてから離して発音するので、英語のLとは違う音になります。音の周波数が違うので日本語の耳のアンテナにこのLは引っかからずに、Lがない「ゥ」という音に聞こえるのです。
母音 を アイウエオ、それ以外のものを子音と言います。なので、ここでのLは子音です。 私はこんな風に消えたように聞こえてしまう音を「子音忍者」と呼んでいます。 言葉を覚えるときは、子音が消えたバージョンの音で覚えましょう。
立ち技で狙う身体の部位
武道の立ち技では、相手の柔らかい部分や弱い部分を狙います。ターゲットになる部分は臓器、関節、軟部組織など。
- 立ち技で狙うターゲット
- 臓器
- Eye (目)
- ear (耳)
- stomach (腹)
- liver (肝臓)
- kidney (腎臓)
- 関節
- Temple (こめかみ)
- chin (アゴ先)
- rib (肋骨)
- rib cage (胸郭)
- hip joint (股関節)
- knee joint (ひざの関節)
- 軟部組織
- Throat (喉)
- groin (鼠径部)
- ITB (腿の外側の腸脛靭帯)
- 臓器
Stomachは英語で腹全体を意味しています。私はStomachは胃という意味だと思っていたので、蹴りで強い力を出すときに”Use your stomach!”と言われて、腹筋のことも指すと知りました。 ちなみに、胃が痛いときと腸が痛いとき、どちらの場合でも”I have a stomach pain“(お腹が痛い)と言います。
ITBはIlio-tibial Bandの略で、強いキックを受けると痛すぎて立てなくなる腿の外側部分です。
Hip=お尻は間違い
ヒップ、と聞いて、どこをイメージしますか?
日本語でヒップというとお尻のことですが、英語のHipは太ももの骨と骨盤のつなぎ目である股関節のことを指します。お尻のことは、口語ではそのまま「おしり」を意味するbumや「おしりの筋肉」を意味するGlutes がよく使われます。
私はマッサージの勉強をしていたときに、hipが解剖用語の股関節のことなのだということを初めて知りました。それまで思っていたお尻としてのhipと全く違ったので、その時からhipという言葉に対するイメージが大きく変わりました。
武道の蹴り技ではこの股関節を柔らかく使うことが教えられます。 道場でこのhipという言葉に出会ったのは、蹴りの練習の時でした。すでに言葉の意味を知っていたので、練習中にhipと聞いてすぐに股関節をイメージすることができました。もし知らなかったら”Relax your hip!”と言われて「お尻の筋肉をゆるめるのか(笑)?」と不思議に思ってしまっていたでしょう。
日本語のヒップとは違って、Hipはお尻の筋肉ではなく、関節のことを指すということを、ぜひ覚えておいてくださいね!
子音忍者 D & L
ここで子音忍者が再登場です。Kidneyの発音は、Dが子音忍者で、ドロンと消えてしまっています。Dの発音の部分が空白(ッ)になって、「キドニー」ではなく「キッッニー」と聞えます。オーストラリアのSydneyも同じく、「シドニー」ではなく、「スィッッニー」と発音されます。
Templeも先程のL同じで、テンプルではなくLがない「テンプゥー」に聞こえると思います。
寝技に使う身体の部位
床で行う武道の寝技は、手足を使って相手を掴んだり、胴体の重さを乗せたりして相手の関節の動きを押さえるか、靭帯をひねったり、気管や血管、内蔵を圧迫することによって攻撃をします。
- 相手の関節の動きを押さえるのに使う自分の身体の部位
- 手足・四肢 (limbs)
- Arm (腕), hand(手)
- thigh (腿)
- knee(膝)
- feet (両足)/foot (片足)
- 胴体
- Head (頭)
- chest (胸)
- hip (股関節)
- leg (脚)
- 手足・四肢 (limbs)
寝技は立ち技に使う手足に加えて、胴体を使うところが特徴的です。相手の上にかぶさって頭や胸を使って相手を押さえつけたりすることを指示されることがよくあります。立ち技では腿を使うことはあまりないですが、寝技だと腿で挟んだりするので、腿を意味するthighを覚えておくと良いですよ。発音は、タイツのようなタイ、ではなく、サーイ、が正しい音になります。タイと発音するのはタイ国のThaiです。
Footとfeetの違いについて覚えるコツです。また中華料理の話になってしまいますが、Chicken feet(ゼラチン状になって味付けされた鳥の足先)という料理があります。お皿にたくさんのっているので、feet(2つ以上の足)と言うんですね。私はの言葉に混乱するので、feetはお皿にたくさん乗っている足、footはフットボールでキックする一本の足、とイメージして聞き取るようにしています。
- 掴んだり、押さえたり、ひねったりする相手の関節
- Neck (首)
- shoulder (肩)
- elbow (肘)
- wrist (手首)
- hip (股関節)
- knee (膝)
- ankle (足首)
- 圧迫する相手の気管・血管・内蔵
- Windpipe (気道)
- carotid artery (頸動脈)
- rib cage (肋骨)
- lung (肺)
- stomach (腹部)
寝技の攻撃のターゲットになる部分には、手首足首など小さめの関節も含まれます。(AnkleのLの音も子音忍者で消えて「アンクル」ではなく「アンクゥー」になっています。)立ち技で使う身体の部位とまた少し違っていますね。
Windpipe(気道), carotid artery(頸動脈)は、いつも使う言葉ではないですが、首の絞め技を習う時に出てきました。
先生を相手に絞め技の練習をしていた時のことです。よく分かっていなかった私は先生の首の前面にある気道を思いっきり締めようとしていました (先生ごめんなさい) 。そこで先生は、「気道を締めると損傷する可能性があるので、道場では首の側面にある頸動脈の圧迫を狙いなさい」と教えてくれました。
実際に気道を締められてみると、喉仏の骨が気管に当たってとても痛くて不快。動脈を締められると圧迫されて苦しいのですが、組織が傷つくという感じはしませんでした。
Windpipeとcarotid artery。この二語がわからないと危険なので、覚えておくと良いでしょう。
武道の技を習う時に出てくる身体の基本的な部分はざっとこんなところです。意外に知らない単語や思っていたのと違う発音のものもあったでしょうか?
こんなに沢山の英語を覚えられない!という場合は、全部を一息に覚えなくても大丈夫です。とりあえずは寝技だけなど、習っている武道に関係する部分を覚えてみましょう。
身体の前後につく言葉
武道の技で使う身体の部位は、英語では下のように、自分と相手どちらの身体を表すのか、片方なのか両方なのか、という情報と必ずセットになって表現されます。いわゆる、所有格と単数・複数の表現です。
単数・複数
英語の複数形には基本的にSが付きます。手足などペアになっている身体の部分は意識してエスがつくのか付かないのかを聞き取るようにしてみましょう。
- 相手の片腕:his arm
- 相手の両腕:his arms
日本語には単数・複数の概念がないので、これを聞き落とすと結構恥ずかしい行動を取ることになったりします。
私は武道の関節技を使う練習で、”Hold his arm with your hands”と言われて、相手の片手を自分の両手で押さえなくてはいけないのに、相手の両手をそれぞれに押さえていて、「何やってるんだ!」と笑われたことがあります。his armにSが付いていなくて単数だということを聞き落としてたんですね。
手に関する指示は片手、両手が出てくるので、意識して単数複数を聞き取るようにすると良いですよ。
また、Wrists(ウィスツ), arms(アームズ),Hips(ヒップス) など、複数形のSを聞き取るときには「ツ・ズ・ス」のバリエーションがあります。このことも頭の片隅に入れておきましょう。
Theの発音は「ザ」ではない!
Theはすでに話に登場したものを繰り返して指すときなどに使われます。右手、左手の右左というような情報は、繰り返して言うときにTheとして省略されるので、このTheが聞き取れないとどちらの手なのかわからなくなる可能性があります。
さて、このTheは一体、どんな風に発音されるでしょうか?長年英語を聞いてきた、私の聴覚では、Theは「ザ」ではなく、「ダ」に聞こえます。
ヒップホップを聞くと、黒人の人はtheを明らかに「ダ」、と発音しているのがわかります。Thは上下の前歯に舌を挟んで発音するのですが、この舌が怠けると口の内側に下がってきて、「ダ」の発音と同じ位置、つまり上顎に舌が触るくらいの位置になります。
試しに「ダ」と言ってみてください。それから今度は舌を上下の前歯で軽く挟んで、そのままもう一度「ダ」と言おうとすると、Theになります。私は高校生の頃、ヒップホップを聞きながらTheが「ダ」になるのは自然だな~と思っていたので、英語の先生が「ザ」と発音しているのがとても不思議でした。
今度は「ザ」と言ってみてください。「ザ」と発音するには上下の前歯を噛み合わせて音を出すので、さっきの「ダ」と口の動かし方が全く違うのがわかると思います。音の出し方が違うので、出てくる「ザ」の音の周波数はtheとは全然違います。なのでTheを「ザ」だと思っていると聞き取れなくて当たり前なんです!
また、”The arm”のように、続く言葉がアイウエオのどれか(母音)だった場合は、the=ディになります。 (「ザ」と合せて、昔学校ではこれを「ジ」だと教えられていました…。)
- その腕:the arm(ディ・アーム)
武道のクラスで技について詳細に聞き取るために、The=ザ、ジという観念を持っている方は、これを思い切って捨てて、 ダ、またはディがTheなんだ!と思っておきましょう。
所有格はコロコロ変わる
説明中に出てくる「誰々の」という、 所有格についてですが、私は英語で所有格を設定するのに一定の法則があるのかと思っていたのですが、ネイティブの口語を聞いていると、yourになったりmyになったり、ランダムでごっちゃにされています。
例えば、武道の技の説明をするときに、先生が”your arm (あなたの腕) “と言う代わりに、”my arm(私の腕)”や”our arm(私達の腕)”と言って、同じ話の中で主語が変わることがあります。ですが、どちらも意味は同じで「自分の腕」を指します。
- 自分の片方の腕:my one arm
- 自分自身の手首:your own wrist
- 自分の両方の腕:both of our arms
これは主語も同じで、説明を聞いている限りでは、Iと言ったり、youやweのどれを使ってもよく、途中で変わっても不自然ではないようです。真面目に聞いていた私は、「さっきはweと言っていたのにどうして今度はyouなの?」と混乱してしまったりしたのですが、第三者のhe, she, theyでない限りは自分側のことを指していると思っているとカンタンです。
とにかく、前後につく言葉から自分のことなのか相手のことなのかさえ判別ができれば良いんですね。
こんな風に、武道の技に使う身体の部分が「自分のものなのか (my/your/our)、相手のものなのか (his/her/their)、前に出てきたものなのか(the)」、「片方なのか両方なのか (複数形のS) 」、さらに正しい音(The=ダまたはディ, 複数形のS=ツ、ズ、ス)を聞き取ることを意識してみましょう。 これができれば先生の言った通りに動けるようになるはずです!
「動き」をあらわす英語の言葉
武道の技に使う、「身体」の部位をあらわす言葉を知ったら、次は技の「動き」を表す言葉を見てみましょう。
「動き」の英語トップ3
英語で動きの説明を聞くときに、よく耳にする言葉があります。話し言葉では、短くて言いやすい言葉が多用されます。そこで、武道の技の動きの説明でよく使われる言葉のトップ3をランキングしてみました。
- 第1位:GET
「英語の動詞はGetさえ知っていればほとんどの日常会話は通じる!」と言われるくらい、Getは口語で一番よく使われます。
それにも関わらず、あの「ポケモンゲットだぜ!」の 名ゼリフは、英語では”Pokemon; Gotta catch’em all!” (ポケモン全部捕まえなきゃ!)になっています。
どうして日本語のゲットは英語でGetと訳されないのでしょうか?実は、英語でのGetは日本人が思っているものと意味が少し違っているからなんです。
日本語でゲットというと「何かを手に入れる」という意味ですが、英語のGetは、自分から行く、自分から何かをする、という意味で色んな動詞の代わりに使われるんですよ!
例えば、相手の両手の内側に入る、という時の「入る」をGo insideの代わりにGet insideと言ったり、その体勢を取る、という時の「取る」をTake the position の代わりにGet to the positionと言ったりします。
- Get(Go) inside of his hands
- 相手の両手の内側に入る
- Get to (Take) the position
- その体勢を取る
- He gets(grabs) my wrist
- 相手が自分の手首を掴む
こんな風にGetは色んな単語の代わりに使われます。色んな意味でたくさん使われるので、一つひとつ意味を覚える必要はありません。 武道の技の説明ではGet=「手に入れる」という意味でない場合がほとんどなので、この公式は一度頭から消しておきましょう。
そして、Get=自分から何かをしに行く、というイメージだけ持っていおて、前後の言葉から意味を想像すればOKです!
ちなみに、Getの発音は、Tが子音忍者になって消える場合と、 次の言葉と融合して音が変化する2つの場合があります。
Tが消える場合は、”Get to the position “(ゲッッ・トゥー・ダ・ポジション)のような音になり、Tと次の音が融合する時は”Get inside“(ゲティンサイド、ゲディンサイド、ゲリンサイド) のような音になります。
ですが、音の変化は多様なので、一つひとつ覚えるよりも、Get=「ゲ」だと思っておいて「ゲ」という音が聞こえたらGetだと思っておくとカンタンです!
- 第2位:KEEP
Keepは手足など身体の部分をある場所に固定する意味でよく使われます。
- Keep your guard
- 防御を保持する
- Keep your eyes open
- 目を開けておく
日本語に音も意味もそのまま定着しているので聞き取りも理解も簡単にできると思います。
- 第3位:BRING
Bringは手足などの身体の部分をある場所に移動させる意味でよく使われます。発音はGが消えてブリン、と聞こえるかもしれません。
- Bring my hands on his back
- 相手の背中に自分の手を持っていく
- Bring my knees on his stomach
- 自分の膝を相手の腹の上に持っていく
Get, keep, bring。簡単で言いやすくて使われる範囲が広いこの3つの言葉が聞き取れると、とても便利です! 武道の動きでGetは特に多用されるので、自ら何かをする、自分から行く、という意味合いで他の単語の代わりに使われることを頭にいれておきましょう。
攻めの動きをあらわす言葉
武道の攻めの動きによく使う英語の言葉はこちら。
- 押す・引く・振り回す
- Push his hands
- 相手の手を押す
- Pull his arm
- 相手の腕を引く
- Swing your arms
- 両手を大きく振る
- Push his hands
- 打撃する(立ち技)
- Strike the head with your elbow
- 自分の肘で相手の頭を打つ
- Hit the temple with knuckles
- 相手のこめかみを拳で打つ
- Punch the stomach
- 相手の腹を突く
- Strike the head with your elbow
Knee (膝蹴りをする) Elbow (肘打ちをする) のように、膝ひざ、肘ひじなどの部位の言葉だけで攻撃を意味することもあります。”Knee!”と言われたら膝蹴りをしましょう。
- 締める・圧迫する(寝技)
- Choke his neck
- 相手の首を締める
- Put pressure on the chest
- 相手の胸に圧を加える
- Knee ride on the rib cage
- 相手の肋骨に膝乗りする
- Choke his neck
- 掴む・押さえる・ひねる(寝技)
- Grab his wrist with your hand
- 相手の手首を自分の手で掴む
- Lock his arm
- 相手の腕を固める
- Trap his leg
- 相手の脚を捕える
- Hold him down
- 相手を押さえつける
- Pinch down on his back
- 相手の背中を挟み押さえる
- Twist the spine
- 背骨をひねる
- Grab his wrist with your hand
Put pressureのTも消えて(プッップレッシャー)と聞こえます。ほとんどの言葉が日本語に輸入されている簡単なものなので、聞き取りができたら意味がすぐにわかると思います。

先端の部分を使って切りつけるように攻撃をします。
大きさと重さがあるので、太極拳などで手首の柔軟性をトレーニングするのにも使われます。
守りの動きを表す言葉
武道では、同じ動きをする技でも、攻めに使われる場合と守りに使われる場合があります。KeepやPullなどの英語の言葉も、攻めと守りのどちらにも使われます。
- 突きをブロックする
- Block the punch
- 蹴りを逸らす
- Deflect the kick
- 相手の手を縫って通る
- Weave his hand
- 相手の両手を振りほどく
- Break his hands
- 相手の両手を自分の胸に留める
- Keep his hands on your chest
- 顔を覆う
- Cover your face
- 自分の両ひざを引く
- Pull your knees
- 相手の守りを抜ける
- Pass the guard
蹴りを防御するの練習をしていたときのこと。蹴りを両手でただ受け止めている(Receive)私を見た先生が一言、”Just touch and deflect the kick!”と言いました。
Deflectという言葉のdeは「離す」、flectは「曲げる」という意味です。武道では、自分に向かってくる突きや蹴りに手などで軽く触れて、進行方向を変えて逸らすときに使います。攻撃の進行方向を「曲げflect」て、自分から「離すde」といったイメージ。
蹴りを受けることと逸らすことの違いは、蹴りの力の進行方向を変えることなんだということを、先生は教えてくれていたんですね。
動きの形を表す言葉
武道の動きで効率が良い形は、直線か円です。 直線の動きは最短距離を描くことで、曲線よりも速いスピードで動くことができます。円の動きは、遠心力を使って強い力をつくり出すのに使われます。 直線、円、それぞれの動きを表す英語の言葉を見てみましょう。
- 直線の動き
- Shoot for the leg
- 脚を狙って突進する
- March forward/back
- 前/後ろに進む
- Advance :前進する
- Retreat:後退する
- Shoot for the leg
- 円の動き
- Rotate/Turn your head
- 頭を左右に回す
- Spinning kick:回し蹴り
- Pivot on your foot
- 片足を軸にして回転する
- Draw an arc:弧を描く
- Turn clock-wise
- 時計回りに回転する
- Anti-clock wise
- 反時計回り
- Counter-clock wise
- 反時計回り
あまりむずかしい言葉はないですね。でも、簡単だと思っている言葉にも、実は落とし穴があるんです!
カンフーのボクシング・クラスでのこと。 相手との距離の取り方の練習をしている時に、 私は先生から”March forward! March back!”と指示されました。
マーチといえば、コアラのマーチ。行進曲。私はマーチという言葉には楽器を鳴らしながらゆったり前に進んでいくイメージしか持っていなかったので、とりあえず相手に近づいたり離れたりのフットワークをしていたところ、”Too slow! Faster!!”(遅すぎる)と怒られてしまいました。
先生は、敵に届く範囲にすばやく飛び込んで攻撃をして、そのあと瞬時に敵の攻撃が届かない距離に飛び退く、という速さの練習をさせたかったのです。
私はそこで初めて、Marchは前進・後退両方に使えて、しかも速く動く場面でも使われることを知って、「コアラの動きとは全然違うじゃないか!」と思いました。
また、Retreatという言葉が後退するという意味だということも、私はカンフーの型の稽古で初めて知りました。March backと同じ意味ですね。リトリートというとヨガの癒やしツアーというイメージしか持っていなかったのですが、Retreatは、Retireの類語なのだそうです。第一線から引き下がる、という意味でリタイアとリトリートは似た言葉なんですね。
こんな風に、もともと日本語で知っている英語の言葉には、たいがい、違う意味やニュアンスという落とし穴があるものなんだと思っておいて、間違いはないでしょう。
動きの向きをあらわす言葉
武道の技の動きをするときには、形だけではなく、どちらの方向へ動くのかということも関わってきます。
Upward, Forward, Towardなど、 方向をあらわすup/down/for/back/out/in/toにwardをつけて表現されることがよくあります。–wardは「-に向かって」という意味です。 Sをつけて–wardsになることもあるので、どちらの場合も英語を聞き取れると良いでしょう。
ちなみに、Edwardという人の名前がありますが、これはどこかに向かっていく人なんでしょうか(笑)?一度ネイティブに聞いてみたいですね。
wardに加えて、a-の付く言葉にも「-に向かって」という意味があります。 Acrossは、「Crossする方向に向かって 」という意味になります。 Aheadは前方、Asideは脇という意味です。
Faceやaheadのように、身体の一部をあらわす言葉が方向を意味する場合もあります。
- 正面に向く:Face the opponent(相手の正面に向く)
私の学んでいるカンフーの基本の構えは、相手の正面に自分の身体の側面を向けて、首をグイッとひねって顔だけを相手に向けるのですが、この構えを指示する時に先生が、こんな風に言っていました。
- “Your body is facing to the left but your face is looking at the opponent”
(身体は左側に向いていても、顔は相手に向く)
Faceは顔だけではなくて、一般的にモノの表面や、モノがある方向を向くという意味で使える言葉なんですね。 顔以外の身体を向けるのにも”face”を使うなんて面白い。そういえば、表面のこともsurfaceと言うので、日本語で聞く「フェイス」よりももっと意味が広いと思っておくと良いかもしれません。
武道では向きの指示はよく出てくるので、 “-ward”, “a-“, “face”という 向きをあらわす3つの言葉は知っておいて損はありませんよ!
動きの角度をあらわす言葉
武道の技の動きの方向がわかったら、次は角度です。角度をあらわす英語の言葉は方向に比べて少し専門的でむずかし目になりますが、イメージを使って覚えていきましょう。
- Slice him diagonally with the sword
- 剣で相手を斜めに切りつける
- Cut down vertically with the sword
- 剣で垂直に切り下ろす
- Move within a horizontal line
- 水平線上に動く
- Keep your feet parallel
- 足の角度を並行に保ちなさい
ひし形◆ダイアの形はナナメ線でできているので、私はダイアゴナルと聞いたら◆をイメージしてナナメ、と思うにしていました。
パラレルのParaという言葉には、横付けになって、と意味があるようです。この言葉を英語の授業で習った時、怪我をした人のそばで現場から病院まで伴走する救急救命隊もパラ・メディックと呼ばれるんだと知ってなるほど~と思いました。寄生虫も、くっついて相手と一緒に動くのでパラサイト、と名付けられてれます。
こうした英語のパーツの意味を知っておくのも、漢字の部首を知っているようなもので、他の言葉の意味を予想できるので便利ですよ。
角度の度数はおもに3種類
角度の度数をあらわすのはDegreesです。
- 45度・ 90度・180度
- Forty-five degrees
- Ninety degrees
- One hundred and eighty degrees
武道の技の一部である足と足の角度や、肘や膝の角度、身体を回転させる角度など、この3つの角度はよく度数で表現されるので覚えておくと便利です。英語のアクセントによって、「のようにTが発音されてティーと聞こえるときと、「」のようにTが変化してリィと聞こえる場合があります。
補足:数字の聞き取り
角度の他に、数に関して英語の聞き取りがむずかしいものがあります。
例えば、90をあらわす Ninetyと19をあらわすNineteenは似通っていて聞き取りづらいものの一つです。私はこの2つの違いを聞き取れないことがあります。
武道の稽古が終わる直前に、先生からの”Ninety push-ups(腕立て伏せ)!”という指示を聞いて、都合よく腕立て19回だと解釈していたら、実は90回で地獄を見た!ということもありました(笑)。
ナインティ、とナインティーンの違いを聞き分けるときに、ナインが強く発音されている場合は90、ティーンが強い場合は19という判別をすることはできます。 ただし、この2つの違いは曖昧に感じられることが多いです。
実際ネイティブでも「え?どっち?」と聞き返していることもあるくらいなので、聞き取れなくても無理はありません。 実際、混乱しやすい言葉なので、わからなかった時は落ち込まずに、遠慮なく聞き返すようにしてみましょう!
まとめ
それでは、武道の技に関する英語についてのまとめです。
ネイティブでない私たちが道場で英語を聞き取ることができないのは、言葉の意味と正しい発音を知らないことと、それを実際の場面で経験していないことが原因でした。
道場での英語をラクに聞き取れるようにするために、私たちは、使われる言葉の意味と正しい音を予習しておくことができます。
武道で出会う技に関する英語の「言葉の意味」と「その発音」を効率よく予習するためのポイントは下の通りです。
- 身体の部位
- 立ち技と寝技で使う部位が違うので、習っている武道に必要なものだけを覚えればOK
- Heelとballs of footを覚えると蹴りや足さばきに便利
- 所有格は自分か(my/your/our)相手か(his/her/their)だけを聞き分ければ良い
- Hipはお尻ではなく股関節
- 動き
- Getは「自分から何かをしに行く」イメージで意味を想像して、発音は「ゲ」だと思っておく
- 簡単な言葉ほど知っている意味と違うと思っておく
- 動きの方向は3つの言葉、 -ward, a-, face を覚えておけばOK
- 動きの角度は45/90/180 degreesの3つに親しんでおく
- 発音
- 子音忍者が消えた発音で言葉を覚える
- GetのT、HeelのL、KidneyのDなど
- Theは「ダ」または「ディ」
- 複数形のSの発音には「ツ」「ズ」「ス」 のバリエーションがある
- 身体の部位に複数のSが付いているかを聞き取る
- Tyが「リー」と発音されることがある(Ninetyなど)
- 子音忍者が消えた発音で言葉を覚える
身体の部位と動きをあらわす言葉は、技を習う上で基本の英語になります。むずかしい言葉はあまりありませんが、簡単な英語の言葉でも、意外に意味や発音が思っているものと違うことがよくあります。ここで紹介した言葉の意味と正しい発音をあらかじめ知っておくと、どこをどう動かしたらいいのかという先生の説明が聞き取りやすくなって、初心のうちの技の習得がとってもラクになるはずですよ。
予習した内容が実際の場面に出てきて、あー!ホントだ、これか~と思うことがあると思います。一気にすべてを聞き取れるようになることはないので、焦らなくて大丈夫です。音と意味と体験が一つになる瞬間を、ひとつひとつ、道場で楽しんでいきましょう。
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