居合道と剣道の違い5つ!抜刀道との違いも3つ解説

武術・技術

素早く刀を抜き放つ、演武が華麗な居合道。

武道に興味をお持ちの方であれば、同じように刀剣を使う他の武道である剣道、抜刀道と居合道は一体何が違うのか、一度は疑問に思ったことがあるのではないかと思います。

この記事では、居合道と剣道の5つの違いと、居合道と抜刀術の3つの違いについて、歴史的背景や技術、理念などの観点から、想定する場面・技術・精神状態・競技形式・道具などをわかりやすく解説しています。

これを読むことで、他の人にも説明できるようになるくらい、それぞれの違いがはっきりわかるはずですよ!

まずは居合道と剣道の違いから見ていきましょう。

居合道と剣道の違い

居合道と剣道の違いには、想定する場面・技術・心の状態・競技形式・道具がの5つがあります。

想定する場面の違い

剣道も居合術も、どちらも古代から続く古武術である剣術を源流としていますが、どんな場面を想定して行うのかという点が、居合道と剣道で大きく違うところです。

剣道が、戦場での剣と剣との打ち合いの場面を想定しているのに対して、居合道は生活の中で刀を扱う場面を想定しています。

剣道は戦場を想定

剣道の直接の起源は江戸中期に成立した撃剣(げきけん)です。撃剣は戦国時代より前の合戦(かっせん)で使われていた剣術から生まれました。そのため剣道は戦場での打ち合いを想定しているのだそうです。

戦国時代の甲冑を彷彿とさせる剣道の防具。

たしかに、剣道の防具は戦国武士の甲冑(かっちゅう)をイメージさせられますよね。

居合道は町中を想定

これに対して居合道は、室町時代末期~江戸初期にできた居合術から生まれています。

居合術も剣術が元になっていますが、戦国の世が終わって町中に住むようになった武士が刀を鞘に納めて下げた状態から刀を抜く必要性から居合が生まれたので、居合道は戦場ではなく町中や屋内を想定しています。

座った状態だけでなく、なんと、寝ているときや歩いているときなども居合の想定に含まれているそうです。

剣道は剣術の打ち合いの場面の想定をそのまま引き継ぎ、居合道は生活の中での刀を扱う場面を想定する形に変容したところに違いがあります。

修練する技術の違い

剣道と居合道のもうひとつの大きな違いは、修練する技術です。

剣道は剣(刀)を使って戦う技術を磨き、居合道は刀を極力使わず戦いを回避する技術を磨きます。

両者は全く正反対の姿勢を持っているともえます。これは2つの武道の理念が違うからです。

戦いを修練する剣道

全日本剣道連盟によると、「剣道」とは、

  • 日本の武士が剣(日本刀)を使った戦いを通じ
  • 剣の理法(りほう)を自得するために歩む道

を指すそうです。

(全日本剣道連盟剣道とは何かより)

理法とは、「道理にかなった法則」という意味です。

つまり、剣道は、剣を使った戦いの修練によって剣の法則をマスターする道であると言えます。

このため剣道は、刀(剣)を抜いてお互いに向き合った状態を想定したところから始まり、相手と斬り合う技術を磨きます。(この修練方法を立合・たちあいと言います。)

剣道はお互いに向き合って打ち合う立合(たちあい)の武道

剣道で防具をつけた2人が打合うのは、剣道では剣での戦いに勝てるような技術(と理法の体得)を訓練することが中心になっているからです。

戦いを回避する居合道

これに対して、居合道が目指すのは、

  • 敵をつくらないことを最上とし
  • 敵がいる場合は刀が鞘(さや)のうちにあるうちに
  • (刀を使わずに)に勝利することを目的とし
  • 万一刀を抜くときは、抜いた瞬間に敵を倒すこと

であると言われています。

刀を抜く以前に戦いに勝つことを、居合では「鞘の内(さやのうち)」と呼びますが、刀を抜くことになった場合には、圧倒的な速さで相手を斬ることで打ち合いにならないようにすることを目指しているところが剣道と違います。

刀を鞘から抜かないことを目指す居合道

この点、打ち合いを中心とした剣道とむしろ真逆ですね。

居合は座った状態など不意を突かれた状態から素早く刀を抜いて鞘離(さやばな)れの一瞬で相手を斬るということに重点を置いて修練します。

居合道が単独で早く斬る技術を磨くのは、圧倒的な速さで相手を斬ることで決して自分が斬られないようにして、刀と刀での戦いを回避するためなのです。

想像上の敵の気配を感じ取るところから修練が始まる居合道では、仮想の敵を使うところも剣道と違います。

剣道が剣を使って戦いに勝つ技術を、居合道が刀を使わずに戦いを回避する技術を修練するのは、両者の大きな違いといえます。

心の状態の違い

居合道と剣道は、心の状態にも大きな違いがあります。

居合道は、ふだんの心の状態(平常心)から急に敵が襲ってくることを想定していて、敵に対する最初(で最後)の動作、「初動(しょどう)」を訓練するものだと言われています。

この点が、お互いに戦うつもりである状態(臨戦態勢)から始まる剣道と違います。

同じ武道でも、想定する精神状態がこれほど違っているなんて、驚きです。

とっさの出来事にいかに心を動揺させないかという精神力の訓練でもあるため、居合道のことを心術(しんじゅつ)と呼ぶ人もいます。

競技形式の違い 

剣道も居合道も競技化はされていますが、居合道には対人形式の試合がない点が剣道と違います。

居合道の競技では、剣道のようにどちらがポイントを多く稼いだかではなく、型の演武の完成度で評価によって勝敗が決まります。

居合道の演武は神社などに奉納するために行われることがある点も、剣道との違いです。

道具の違い

剣道と居合道では使う道具の材料や使い方も違います。

居合道では竹刀や木刀を使わない

居合道では鋼(はがね)から造られた居合刀(模擬刀・もぎとう)を使うことが剣道と違います。

剣道で使う竹刀(しない)や木刀(ぼくとう)は、居合道では、使われません。

居合刀は刃がつぶされて切れないようになっていること以外は日本刀と同じ造りです。

(模擬刀は、観賞用の模造刀(もぞうとう)よりも造りが強く、居合の練習に使うことができます。)

居合道の高段位では真剣(切れる刀・日本刀)を使うこともあります。

居合では日本刀を、悟りに至る心の鍛錬をするための霊器として尊ぶため、木製の刀を使わないのだそうです。

居合刀はオーダーメイド

剣道の竹刀(しない)には規定があって大きさが統一されていますが、居合刀は流派の規定に沿ったものや個人の体に合ったものを注文して作るのが一般的です。

抜刀術の稽古と演武に日本刀ブランド肥後虎さんのオーダーメイドの居合刀使わせて頂いています。

剣道は西南戦争(明治10年)の時に注目を浴びて統合・普及されましたが、居合は統合されることなく流派ごとに伝承されてきました。

そのため全国的に統一されている剣道とは違い、居合道には各流派の特徴が残っているので、道具についても規定が団体によって異なります。

打突 vs 斬り込み

剣道の竹刀と居合道の居合刀では、材質や形状が違うので道具の使い方も違います。

まっすぐで反りのない竹刀は、竹刀は打つ・突く(打突)という使い方をしますが、居合刀では斬る、斬り込むという使い方をします。

斬るときに刀を引くのと、斬り込むために深く踏み込んで相手の身体に近づくのが、刀ならではの動作です。

また、剣道の竹刀には鞘(さや)がありませんが、居合刀には刀を納めるための鞘があるので、抜刀と納刀が型に含まれることも剣道と違うところです。

抜刀道との違い

抜刀道は居合道の流れを汲む現代武道です。

意外にも古武道の抜刀術と直接関係はなく、終戦後に居合道の師範(戸山流、中村泰三郎)が「試し切り」を中心とした抜刀道を提唱したことに始まって、1970年代に連盟が結成されました。

抜刀道は、実際に物を使った試し切りを中心としているところが居合道との大きな違いになります。

斬るのがメインの抜刀道

畳表を切ることがメインの抜刀道は、物を相手にしていること・立ち技であること・刀を抜いた状態から始まることが居合道と違います。

実際に物質を斬ることに重点を置いた抜刀道
国際抜刀道連盟HPより

斬る対象が目の前にある状態から始めるので、とっさの出来事に動じない心と初動を訓練する居合道と目的にも違いがあると言えるでしょう。

抜刀道では居合道のような「刀を抜かないで勝つ」という理念は見られません。

抜刀道は居合道の、いかに速く斬るかという部分を抽出・強調して修練するものなので、より物理的な技術に特化しています。

競技性の高い抜刀道

抜刀道の試合では、2人の選手がゴザを巻いた畳表を決められた刀法(制定刀法10本)の型を使って試し切りして、その作法や切り口、精神修養の深さなどが採点されて勝敗が決まります。3名での団体戦もあるそうです。

(目に見えない精神修養の深さが一体どのように採点されるのか、気になりますね。)

抜刀道の試合では試し切りの点数を競うので、型を演武する居合道よりも競技性が高いという違いがあると言えるでしょう。

真剣で物を斬る抜刀道

抜刀道では、真剣である本物の日本刀を練習に使います。

居合道では高段者出ない限り真剣ではない居合刀を使うので、実際に物を切る抜刀道と道具が違います。

私は居合刀を使った経験しかないので、真剣を使う感覚はわからないのですが、抜刀道と居合道の動画を見比べた印象では、抜刀道には強い緊張感と外に意識を向けている感じがあるのに対して居合道からは落ち着きと身体の内部に意識を集中している感じがするなと思いました。

居合道と剣道、抜刀道との違い

居合道と比べた剣道、抜刀道の違いについてのまとめです。

  • 剣道との違い
    • 戦場ではなく町中屋内を想定している
    • 戦いを回避・最小限にする技術を磨く
    • 平常心から初動のみを訓練する
    • 対人試合を行わない
    • 居合刀で、抜刀・納刀・斬込みをする
  • 抜刀道が居合道と違う点
    • 真剣での畳表の試し切りが中心
    • 競技性がより高い

剣道は対人での打ち合いの技術、居合道は敵なしで戦いを回避する技術、そして抜刀道は真剣・対物での物理的な技術を修練することが大きな違いです。似ているようでやっていることは全然違うんですね。

各武道を学ぶ場合には、この違いを知った上で選択すると良いでしょう!

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