本当の武道仲間を作るために必須の4段階

武術・技術

道場の居心地の良さ、安心できる環境を作るのは人間関係。そして武道の上達度合いを決めるのも人との関係が大きく影響してきます。安全に、安心して、本気を出して一緒に稽古できる相手なくして成長を望むことはできません。武道では、仲間づくりが学びの一部であり、上達のためのカギとなります。

それでは、武道生活において、どうやって仲間を作ればいいのでしょう?

武道生活で仲間作るのには、他人から仲間になるまでのステップをんで行くことが大切です。

そのために大切な点は下の4つ。

  1. 効果的な挨拶あいさつをする
  2. 親しさの段階と目的を認識する
  3. 段階に応じた質問をする
  4. 段階ごとの目的を達成できるような発言をする

挨拶あいさつができると人と無意識レベルでつながることができ、親しさの段階を知れば安心してコミュニケーションする上で不適切な話題が何かが分かります。段階ごとの目的が分かれば、どんな発言をしたら良いのかが分かり、迷うことがなくなります。

効果的な挨拶の仕方についてはこちらの記事に書きましたので、ご一読ください。

それではまず、親しさの段階から見ていきましょう!

親しさの4段階

道場で出会う人たちとの親しさには、どんな段階があるでしょうか?

私はカンフーに出会ってすぐにその素晴らしさに魅了みりょうされ、当初「早くみんなと仲良くなりたい!」と無意識のうちに関係を急いでしまっていました。

一緒に武道を学ぶ方々と親しくなっていくまでの段階をきちんと認識しないで行動をしていたので、その結果、相手と心地よいコミュニケーションが取れない経験をすることになりました。

道場で経験したコミュニケーション上の失敗を経て、今では、道場での人間関係には4つの段階があると考えています。

  • 【段階1】 ♠他人
  • 【段階2】 ♣知人
  • 【段階3】 ♥友人
  • 【段階4】 ◆仲間

この4つの段階は、RPG(ロール・プレイング・ゲーム)を進めていくように、順々に進まないと最後の仲間の関係に到達することができません。SNSで気軽に友達登録ができてしまう現代では、情報を得たり同じグループに属するだけで、無条件に友人や仲間になれるような錯覚を起こやすいですが、私は生身の人間関係にはプロセスが必要だということを学びました。

私はかなり早いスピードでコミュニティ内のほとんどの先生と生徒と知り合い、初心者ながら色々な稽古けいこや合宿などに参加し、先生や兄弟弟子の方たちに目をかけて頂いて、無鉄砲むてっぽうなところも多めに見て頂くことができたので、とてもラッキーだったと思います。

比較的年齢も若く、外国人の生徒であることもあって、何十年と稽古を一緒にしてきている方々の間に知人や友人というステップをすっ飛ばして混じらせてもらっていました。

共に武道の素晴らしさを認識して一緒に学んでいるという部分での同志意識によって繋がっているという感覚がありましたが、先生や先輩たちと技術的なところの話はできるのですが、なぜか稽古以外のところで、中々本当にリラックスして打ち解けた会話ができていませんでした。

私はずっと、それを自分の英語の理解力(特にリスニング能力)のせいだと思っていたのですが、そうではなく、実はこの「親しさの4段階」のプロセスをまずに仲間になろうとしていたことが原因だったということが分かりました。

親しさの4段階での、他人から知人、知人から友人、友人から仲間へという順序は逆転不可で、一段階ずつクリアして次に進んでいくゲームのようなものになります。

親しさの段階ごとの目的

親しさの4段階には、それぞれ以下のような目的があります。

  1. ♠ 他人:存在を認め合う(敬)
  2. ♣ 知人:共感の体験を重ねる(信) 
  3. ♥ 友人:互いをいたわり・め合う(仁) 
  4. ◆ 仲間:こころざしを高め合う(志)

「存在を認め合う」ことは、挨拶あいさつによってお互いのの存在=生命・たましいに敬意(敬)を払うこと。

「共感の体験」とは、お互いに共通する感覚を発見して共有することです。これを嘘偽うそいつわりなく行うことを積み重ねることでお互いの間に信頼感(信)が生まれます。

「お互いをいたわり、め合う」とは、相手の人生や生活、心の状態を知って、苦しんでいる時は気にかけ、喜んでいるときは称賛しょうさんし、どんな状態ときもお互いの存在を愛する(仁)こと。

こころざしを高め合う」とは、それぞれが本当にしたいことや人生の目的に向かって勇敢に進み、その姿をお互いに認めることによって良い影響を与え合っていくことです。「鼓舞こぶinspireインスパイア)し合う」とも言えます。

目的を達成できると次の段階に進むことができるので、それぞれの段階を次のように定義できると思います。

  1. ♠他人とは、お互いの存在を認め合う前の関係
  2. ♣知人とは、お互いの存在を認め合うことができた関係(敬)
  3. ♥友人とは、存在を認め合い、共感の体験を積み重ねた関係(敬+信)
  4. ◆仲間とは、存在を認め合い、共感の体験を積み重ねた上で、お互いをいたわり、め合うことがすでにできている関係(敬+信+仁)

こうして、段階を進むごとに、敬、信、仁…と使える力が増えていくのです。

段階に応じた質問と目的のための発言

情報のコンフォート・ゾーン (安心領域)

武道の道場で出会う人々と心地の良い距離をつくっていくためには、段階に応じて質問する内容と量を変えていくことが必要になります。

私は、何を話して良いのかわかならいのが怖くて、相手に質問をしすぎて失敗したなと思ったことがあります。そこから学んだことは、他人、知人、友人、仲間、の4つの親しさのそれぞれの段階ごとに、共有しても違和感のない「コンフォート・ゾーン(安心領域)」の情報が決まっているということです。

まずは相手との親しさの段階を認識し、それに沿った質問をしていくことが大切です。下の表は私が考えた、情報のコンフォート・ゾーンです。

<共有して違和感のない情報のコンフォートゾーン>

【段階】 質問内容 分類 時系列 目的
1.
他人

名前 トレーニング歴
ポジション
基本的 過去~
現在

(認)
2.
知人

出身
住まい
職業
興味関心
(家族構成)
社会的
物理的
過去~
現在

(共感)
3.
友人

気分
感情
仕事の調子
家族との関係
健康状態

個人的
心理的
状態

現在
(愛)
4.
仲間

夢、情熱 人生の目的 核心的 未来
(鼓舞)


相手に質問するときは、段階以上の情報を引き出さないようにするとお互いに心地の良い会話ができます。そして、発言は、目的(敬)(信)(仁)(志)が得られるような方向に向けましょう。

次に、それぞれの段階について、具体的にどのように行動していくのかという説明を加えていきたいと思います。

【1】♠他人と挨拶(あいさつ)を交わす

初対面の他人と隣合わせになることもよくある道場。話かけないのも失礼だし、何を話したらいいのか分からなくて戸惑うこともあると思います。

私は自分のことを話すのが得意ではなかったので、間をもたせるために、初対面の人に色々質問をしすぎてしまう傾向がありました。そうすると相手との関係に必要以上の情報を引き出すことになり、 相手のプライベートを侵害して失礼になってしまったりすることもありました。

初対面の他人と挨拶あいさつを交わすのに必要な情報は、

  • 名前
  • トレーニング歴
  • 武道の組織内での役割

程度です。沢山は要りません。

(英語で名前を覚えるコツは、聞いてすぐ相手の名前を口に出すか、イメージの近い別の言葉に置き換えることです。名前を忘れた時には、 改めてスペルを聞くことで失礼にならないように聞き直すことができます。)

この程度の情報が得られたら挨拶としてはオーケー。自分の名前も、イメージの近い別の言葉に置き換えて教えてあげたり、相手に分かりやすいようにスペリングして伝えます。こうして挨拶ができれば(敬)獲得かくとく!です。

【2】♣ 知人と共感を体験する

挨拶あいさつができたら、もう次の段階の知人同士です。知人の段階では、共感する体験を重ねることが目的になるので、自分も相手も感じているであろうことにアンテナを向けて話をします。

例えば、

  • 同じ初心者への共感の例: 武道教室の環境
    • 「ここは駅から近くて通いやすいですよね」
  • 先生への共感の例: 武道教室の印象
    • 「たくさん人がいて活気がありますね!」

このように、相手から「ほんと、そうなんだよね!」という言葉が返ってくるようなことを発言します。

ここで大切なのは、「自分が本当にそう思っていること」を発言することです。相手が思っていそうなことだけに目を向けて、自分が思っていないことを言って共感を得てしまうと、(信)が獲得かくとくできません。(信)はマコト(真実)の心を共有することで生まれるからです。

どんな小さなことでもいいのですが、自分の発言が常にお互いの(信)にかなっていることを意識しましょう。そうして共感の体験ができると、お互いに何とも言えない幸福な気持ちになります。

この時点では、相手のことを気遣きづかったり、めたりする(仁)の行動は不適切です。自分が病気の時に、信頼のない相手から気遣きづかわれても困ります。また、そのような相手から誉められても、お世辞と感じてしまいます。

例えば、知人の関係の相手が、「風邪引いちゃって具合悪いんよね」と漏らした場合、「大丈夫?薬飲んだ?」という「労り」は行き過ぎの行動で、「最近流行ってるもんね。私もこの間引いて大変だったよ」という「共感」にとどめることが適切です。

もし、共感の体験を積み重ねるためもう少し情報が必要だなと思ったら、 出身、住まい、職業、家族構成など社会的な要素に限って追加で質問し、そこからまた共感できる領域を探していきましょう。必要があれば質問していくというスタンスで、情報を取りすぎないことが心地よさを維持するポイントです。

ちなみに、天気については、あまり共感の話題に適していないと思います。私の住んでいる地域の天気が変わりやすいせいか、「暑いですよね」というと「いや、寒いよ!」など、感じ方が人それぞれで真逆の答えが返ってくることがあるので、私はなるべく使わないようにしています。

私は、相手のアクセントを聞いて外国の人だなと思ったら出身をたずねて、海外生活のことで共感することがよくありますよ!

【3】♥友人を労り、称賛する

人によっては、どれだけ共感の方向に話を投げかけても、自分のしたい話ばかりし続ける人もいます。そういう相手とは、本当に共感を十分していけるまでは、残念ながら友人の段階に進むことができません。そういった相手には、友人の段階で行う気遣きづかいやめではなく、あくまで共感をすすめるようにしましょう。

自分だけでなく相手からも自分が思わず共感してしまうような話が振られるようになって、十分に相手と偽りのない共感を体験し、お互いを信頼できる気持ちになったら友人の段階です。

今度は、今まで知ってきた相手の社会的な情報をもとに、相手の日々がどんな状況なのか、相手の状態を知る質問をして、そこからいたわりや称賛しょうさんをします。

具体的には、「最近仕事はどう?」「週末はどうだった?」「最近、武道の稽古はどう?」 などの、”HOW”をつかった状態を知る質問をします。そして、そこから 得られた情報をもとに、「それは大変だね」「大丈夫?」「良かったね!」「すごいね!」 などと、 愛とサポートを示す言葉をかけます。

ここで大切なのは、友人であっても、会ったその日には必ず「挨拶」→「共感」→「いたわり・め」というステップをむことです。どんなに親しくても、会っていきなり「週末どうだった?」と聞かれてもただの社交辞令になってしまい、相手のことを気遣きづかっていることにならないからです。

【4】◆ 仲間と鼓舞(こぶ)しあう

いつ会っても挨拶あいさつと共感がスムーズにでき、お互いの状態から労りやサポートを十分示せるようになって、ようやく、仲間と言える段階に入ることができます。

少しだけ話しがそれますが、小学校の運動会などで活躍する応援団を思い出してみてください。太鼓を叩いて、扇子を舞わせて、フレー!フレー!と声を出して仲間を応援し、それを見たり聞いたりした選手は心強くなってもっと力を発揮できるようになります。日本語の鼓舞こぶという言葉は、こんな風に仲間を応援するところから生まれています。

一方、鼓舞の英訳であるinspireインスパイアという英語には、息を吸い込むという意味があります。言葉の元になるラテン語の意味は、in(入れる) + spirit(息) で、「息を吹き込む」。人の心と呼吸は密接に関係しています。 「夢に向かって進んで行くぞー!」という希望と勇気に満ちた心が呼吸になってあらわれ、その呼吸を吸い込んだ仲間にも希望と勇気があふれてくる、というのがinspireインスパイアのイメージです。

そしてそれは、相手の呼吸を吸い込んでもいいと思えるほどの信頼関係があって初めて可能になることです。

武道をやっていると、武道を志として学んでいる人が多いので、初対面でいきなり夢や情熱を語り出す人に出会います。話を聞いていておおー!とその瞬間は思ったりするのですが、やはり関係がきちんと構築できていないと、本当の意味で鼓舞インスパイアされず、その夢と意気込みを自分も吸い込んで影響を受けたいと思えません。

武道の組織内で起こる多くの仲違いなかたがい喧嘩けんかは、この「段階間違え」からきているような気がします。相手との関係が進む前に自分の夢や志などを語ってしまい、間違っていると批判されたり、ねたまれたり…。

方向性が違うという理由で、破門はもんされた先生の話などを聞くことがあります。私が思うに、方向性は人それぞれです。人はそれぞれ持って生まれた人生の目的やたましいの願いがあります。武道はそれを実現させるための手段でそれ自体が目的ではないので、方向性は違って当たり前だと思います。

切磋琢磨せっさたくま」の切・磋・琢・磨という言葉は、それぞれ別の素材を加工する意味に使われ、「切磋琢磨」という言葉は、扱う素材を知り、素材に合った道具と方法で加工することを言うのだそうです。素材も加工する方法、方向性も人それぞれ。

仲間とは、人生の目的(志)、またはそれを発見するところに向かって勇敢に進む人たちが、お互いの性質を知り愛を持ってサポートする体制をきずいた上で、互いに応援し合い、良い影響を与え合いながらこころざしを高め合っていく関係だと思います。

仲間ができてくる段階では、

  • 自分の志とは何か?と自問し、それを言葉にして発信する訓練をする
  • 仲間の発する言葉や文章、活動から、相手の人生の志について知り、自分の志を強化するエネルギーとして取り込む
  • お互い、に良い影響を与え合うことで志を高め合っていく

といったことを目標にしましょう。

自分の夢や志について、実際に合って話す、SNSやブログなどに書いて公開する、相手のものを見るなどは、本当の仲間との間で行われて初めて生きてくるコミュニケーションになると思います。

私は、武道で出会った人たちとの関係を通して沢山の経験をさせてもらってきましたが、彼らと本当の仲間の段階に至るまでには、途中抜け落ちているステップがまだ沢山あると感じています。今後、相手との関係を見直して、(敬)(信)(仁)(志)を生み出していけるように行動していきたいと思っています!

追記:レベルアップのための情報開示

4つの段階の中で社交していく途中で、前の段階が十分にできたと思ったら、次の段階の自分の情報を積極的に開示してみるのも、レベルアップのきっかけになります。

例えば、

  • 初対面の他人と挨拶あいさつができたら、
    • 「自分は日本の出身で…」という自分の社会的要素について開示する
  • 互いに十分共感ができたと思ったら、
    • 「自分は最近こうなんだよね」という自分の状態についての情報を発してみる

こうすると相手が次の段階に一緒に上がって来てくれやすくなりますので、ぜひ試してみてくださいね。

まとめ

それでは、おさらいをしましょう!

武道仲間をつくるためのコツは、徐々に親しさの段階を上げていくことです。そのために必要なことを下にまとめました。

  • 親しさの4つの段階を順番に踏んでいく
    1. 挨拶あいさつによって他人と存在を認め合う(敬)
    2. 共感によって知人と偽りのない関係をく(信)
    3. いたわりと称賛しょうさんによって友人と愛をかけあう(仁)
    4. 互いの人生の目的を知ることで仲間とこころざしを高め合う(志)
  • 親しさの段階に応じた「情報のコンフォート・ゾーン」から逸脱しない範囲で質問や発言をするようにする
  • 発言は、各段階の目的である(敬)(信)(仁)(志)が達成できるような方向を目指す
  • 友人などの親しい関係になっても、(敬)や(信)などの下の段階をおろそかにしない
  • 各段階の途中で、十分に目的が達成できたと感じたら、自分から次の段階の情報を開示して、次の段階への移行をうなが

普段何気なく人と関わり合って生活していますが、相手とどんな関係なのか改めて意識してみると、知らず知らずの間に不適切な言動をとってしまっていることがあることに気がつきます。時間はかかるかも知れませんが、人も自分も心地よくあるために、焦らずに良い関係を育てていきましょう。

こうして段階をんで本当の武道仲間を作っていくことができれば 、武道生活の中で安心ができるだけでなく、お互いを敬い、信頼し、愛し、かつ高め合うことのできるようになっていくでしょう。それは武道人として、人として豊かな日々を楽しむことにつながっていく思いますので、ぜひチャレンジしてみてください!

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